三割の手前——まず直答から

「高齢化は年々加速している」。世の中には、そんなイメージが根強くあります。毎年のように「過去最高」が報じられ、その繰り返しがいつのまにか「速くなっている」という印象に置き換わっていく。ただ、最高を更新し続けることと、速くなっていることは、実は別の話です。

まず直答から。総人口に占める65歳以上人口の割合、いわゆる高齢化率は、2024年時点で29.3%です(総務省統計局「社会・人口統計体系」)。ざっくり言えば、およそ三割。街で十人とすれ違えば、そのうち三人が65歳以上という計算になる水準です。この数字がどんな道筋をたどってここまで来たのか、一次データで測りなおします。

一度も下がらなかった、およそ二十年

FIG.165歳以上人口割合(全国)単位: %
出典: 総務省統計局「社会・人口統計体系」(2005–2024)

観測の起点は2005年で、値は20.1%でした。おおむね五人に一人が65歳以上、という時代です。そこから2024年の29.3%まで、差は9.2ポイント。倍率にするとおよそ1.46倍にあたります。

この系列の際立った特徴は、その単調さです。最小値は最古の2005年、最大値は最新の2024年。つまり観測期間中、前の年を下回った年は一度もありません。谷がなく、頂は常に「今」にある。折れ線というより、途切れのない階段です。

途中の推移も淡々としています。2010年に23.0%、2015年に26.6%、2020年に28.7%。五年ごとに切り出しても、逆行はどこにもありません。ここまでは、通説のとおりに見えます。上がり続けているのは事実で、そこに異論の余地はありません。

問題は、その上がり方です。

最大の一段は、最新年にない

一段ずつの高さを測ると、景色が変わります。一年間の上げ幅が最も大きかったのは、2012年から2013年にかけてです。値は24.1%から25.1%へ動きました。観測期間で最大の段差は、最新年ではなく、十年余り前に置かれています。

この時期は、戦後のベビーブームに生まれた、いわゆる団塊の世代が65歳に達していった局面と重なります。ひときわ厚い出生の層が「65歳以上」の側へ順に繰り入れられたことが、背景にあるとされています。割合の分子が短期間に膨らめば、線は跳ねます。跳ねの位置は、遠い過去にあった出生の山の残響を映しているわけです。

一方、直近の一段はどうでしょうか。2023年の29.1%から2024年の29.3%へ。上がってはいますが、最大の段に比べればはるかに低い。データポイントを一年ずつ追うと、最大の一段を越えて以降、年ごとの上げ幅はおおむね縮んできたことがわかります。

つまり「高齢化は加速している」という感覚は、この二十年ほどの全国値に限っていえば、当たっていません。最も急な一段はすでに過ぎました。いま登っているのは、かつてなく高い位置にはありますが、傾きとしては緩やかになった部分です。

ただ、緩やかであることは安心と同義ではありません。上げ幅が縮んでも、水準は毎年、最高を更新し続けています。速さで測るか、高さで測るか。「高齢化が進む」という言い回しが変化の速度を指しているのか、それとも到達した水準を指しているのか——私たちはふだん、あまり区別せずに使っています。数字はその曖昧さを、静かに問い返してきます。

この数字の読み方の注意

この系列は総務省統計局「社会・人口統計体系」の「65歳以上人口割合」(原指標名A1306)で、各年10月1日現在の人口に基づく加工統計です。国勢調査の実施年は国勢調査の人口を、それ以外の年は人口推計を用いているため、基礎データの性格が年によって異なります。また「高齢化率」は通称で、統計上の定義はあくまで総人口に占める65歳以上人口の割合を指します。この記事で読めるのは2005年以降の推移までで、それ以前を含む長期の形は、この系列だけからは判断できません。