通説——世帯の縮小は「最近の話」なのか

平均世帯人数を調べに来た方に、まず答えからお伝えします。総務省統計局「国勢調査」によれば、全国の一般世帯の1世帯当たり人員は、最新の2020年時点で2.21人です。

通説はこう語ります。未婚化が進み、単身世帯が増えた平成以降、日本の世帯は急速に小さくなった——。つまり世帯の縮小を、わりと最近の、いまも進行中の現象として描く語り方です。この語り、どこまで一次データと重なるのでしょうか。以下で測りなおします。

一次データで測る

FIG.11世帯当たり人員(一般世帯・全国)単位:
出典: 総務省統計局「国勢調査」(1960–2020)

記録の始まりは1960年で、値は4.14人でした。最新の2020年には2.21人。差し引き-1.93人で、比率でいえば、この間に平均はほぼ半分になった計算です。

系列の最大値は始点の1960年に、最小値は最新の2020年にあります。最大が最初で、最小が最後。つまりこの系列は、観測の始まりから終わりまで一度も上向かず、調査のたびに前回を下回り続けてきました。反転の記録がひとつもない統計は、そう多くありません。

下がり方は、ずっと同じペースだったわけではありません。細かく見ると、区間ごとの減り幅には波があります。それでも符号はつねにマイナスで、方向は一度も変わっていません。推移というより、方向の定まった長い減少の記録です。

自分の立ち位置も、この数字で測れます。例えば、いまふたりで暮らしているなら、現在の平均のすぐ近くに立っています。一方で、始点の時代には平均そのものだった四人前後の世帯は、いまでは平均を大きく上回る側に移りました。世帯の顔ぶれが変わらなくても、ものさしの側が動けば立ち位置は変わります。

意外な一点——最大の下げ幅は、最初の区間にある

平成以降に急変した、という通説を、区間ごとの変化幅で検算してみました。すると、系列の中でいちばん大きく値が動いたのは、始点の1960年から次の観測点までの、記録のいちばん最初の区間でした。4.14人から3.41人へ。これを上回る下げ幅は、その後のどの調査間隔にもありません。

ただし、ひとつ留保があります。この区間は途中に欠測を挟んでいて、ほかの調査間隔より期間が長いため、幅だけを比べるのは公平とはいえません。そこで一年あたりに均して比べてみても、やはりこの最初の区間の減り方がいちばん急でした。

この時期が高度経済成長期と重なることは、よく知られています。背景には、地方から都市への大規模な人口移動や、核家族化の進行があるとされます。親元を離れた若い世代が都市で新しく世帯を構える動きが、平均を押し下げる方向に働いた、という指摘もあります。単身世帯が語られるはるか前に、世帯縮小の第一章はすでに書かれていたわけです。平成以降の変化は、その続きとして読むほうがデータに忠実でしょう。通説が見落としているのは、この一点です。

なお、縮小が止まった気配はまだありません。直近の調査間でも、値は2.33人から2.21人へと下がっています。第一章より緩やかな、けれど途切れない減少が続いています。次の観測で系列がはじめて反転するのか、それとも最小値をまた更新するのか。その答えは、まだ誰も持っていません。

この数字の読み方の注意

この値は総務省統計局「国勢調査」に基づく、一般世帯の1世帯当たり人員です。病院や社会施設などで暮らす「施設等の世帯」は含まれません。また調査は五年おきなので、この系列は連続した線ではなく、五年間隔の観測点の列として読むのが正確です。本稿の比較も、すべて観測点どうしの時点間比較です。さらに、始点と次の観測点のあいだには欠測期間があり、その間の細かな動きはこのデータからは分かりません。最初の区間の急な変化を読むときは、この空白を頭に入れておいてください。