「ずっと減り続けている」は本当?
「日本の赤ちゃんは昔からずっと減り続けている」——少子化のニュースを聞いて、そう思っている人は多いかもしれません。まずは最新の数字を見てみましょう。2024年に生まれた赤ちゃんは686,173人でした。統計が始まった1899年は1,386,981人だったので、この百二十五年で半分以下になったことになります。確かに大きな流れで見れば減少していますが、実はグラフを詳しく見ると、単なる右肩下がりではありません。山があったり、予想外の場所で急な段差があったりと、興味深い動きが隠されています。
グラフでたどる125年:最も多かった時期、少なかった時期
20世紀の初めから戦前にかけて、赤ちゃんの数はおおむね増えていきました。1920年には二百万人を超え、その後も高い水準が続きます。そして、統計の歴史の中で最も多くの赤ちゃんが生まれたのは1949年の2,696,638人でした。いわゆる「第1次ベビーブーム」のピークです。 その後、数は減り始めますが、一直線ではありません。1973年には「第2次ベビーブーム」という2つ目の山(2,091,983人)があり、一時的に盛り返しています。しかし、この山は最初の記録には届きませんでした。それ以降、グラフは長い下り坂に入ります。2000年ごろには少し落ち着いた時期もありましたが、ここ数年はまた急な勢いで減っています。 最も少なかったのは、最新の2024年で686,173人です。これは、私たちが今まさに「過去最低」を更新し続けていることを意味しています。一番多かった1949年と比べると、今はその四分の一程度しか生まれておらず、百二十五年前よりもずっと少なくなっています。 グラフの数字は、そのまま「同い年の仲間」の数と言い換えることもできます。一番多かった時代の人と今の人では、学校の1学年の人数が四倍近くも違うということになります。
歴史上最大の「段差」は、減少ではなく増加だった
では、百二十五年間のデータの中で、一年間の変化が最も激しかったのはいつでしょうか。「少子化」のデータなので、どこかでドスンと減った時だと思いがちですが、実は答えは逆で「増えた時」なのです。それは1966年から1967年にかけてでした。 1966年は「ひのえうま」の年でした。当時は「この年に生まれた女の子は気性が激しくなる」という古い迷信を信じる人が多く、出産を控える動きが広がりました。その影響で、出生数は前年から一気に落ち込みましたが、翌1967年には反動で一気に増えました。その差はおよそ五十七万人。戦争や不況による変化よりも、この1年の跳ね上がりの方が大きかったのです。 国の仕組みや経済の変化よりも、暦や迷信が数字に最も強い影響を与えたというのは不思議な話です。この急な谷間は、人々の行動が社会の言い伝えによって左右されることを物語っています。次の「ひのえうま」が来るとき、また同じような谷ができるのでしょうか。それとも、もう迷信を気にする人はいなくなっているのでしょうか。答えは未来に委ねられています。
データの読み方について
この記事の数字は、厚生労働省の「人口動態調査」に基づいています。確定した数字を使っているため、ニュースなどで報じられる速報値とは少し違う場合があります。また、戦中・戦後の数年間(1943年と1947年のあいだ)はデータが残っていません。そのため、その前後の比較は「連続した変化」ではなく、離れた時点同士の比較として考える必要があります。